研 究 に つ い て

 研究主題
  自ら考えて判断し、表現し合える児童生徒の育成
~主体的・対話的で深い学びを通して~

主題設定の理由

1 今日的課題から

 私たちは,現在かつてない大きな変革期の中にいる。現在の児童生徒が活躍するであろう 2030 年には,人工知能が革新的に進化し,大きく社会が変化していくことが予測される。また,Society5.0 の到来に伴い,変化の激しい社会の中で,たくましく生き抜いていくためには,AI にはできないであろう人間としての強みを学校現場でも育てていく必要がある。つまり,様々な課題に主体的に立ち向かい,その解決に向けて他者と協働しながら,状況を的確に判断し,よりよい解決方法を探っていく,という人間ならではの力が求められてくる。また,児童生徒一人一人に様々な知識や情報を活用したり,自分の考えを形成して表現したりする力を育てていくことも重要である。
 学習指導要領においては,1資質・能力の育成を目指す「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善の推進2カリキュラム・マネジメントの充実3児童(生徒)の発達の支援,家庭や地域との連携・協働を重視することなどの改善が行われた。教育基本法には,第 13 条において「学校,家庭及び地域住民その他の関係者は,教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚するとともに,相互の連携及び協力に努めるものとする。」と規定されている。また,中央教育審議会第一次答申には,「学校は,自らをできるだけ開かれたものとし,かつ地域コミュニティにおけるその役割を適切に果たすため,保護者や地域の人々に,自らの考えや教育活動の現状について率直に語るとともに,保護者や地域の人々,関係機関の意見を十分に聞くなどの努力を払う必要があると考える。」と明記されている。

2 これまでの実践から

 本校は平成 27年度,高知県教育委員会から「探究的な授業づくりのための教育課程研究実践事業」の指定を三年間受け,研究主題を「主体的に学び,豊かに表現する子どもの育成」として,児童生徒が学びの主体者となり,自分の思いや考えを目的や相手,場に応じて的確にわかりやすく表現できるようになってほしいという願いのもと研究を進めてきた。
 研究の主な柱として『各教科における主体的・対話的で深い学びが実現する授業づくりの実践研究』『総合的な学習の時間の実践研究』『ICT を活用した授業づくり』『9年間を見通した外国語活動・英語教育の授業づくり』『地域人材の活用や教材開発』を中心に研究を行ってきた。『各教科における主体的・対話的で深い学びが実現する授業づくりの実践研究』としては,指導主事を招聘して、次期学習指導要領を見据えた探究的な授業づくりや教科横断的な視点での授業改革を行ってきた。
 『総合的な学習の時間の実践研究』としては,1~9年生の学びの連続性のある単元テーマを作成し,自らすすんで課題を設定し解決していく探究的なプロセスを意識した授業づくりや相手意識をもって場に応じた表現ができるような活動や行事を仕組んできた。
 『ICT を活用した授業づくり』としては,電子黒板やタブレット端末等を効果的に活用していくことを意識した授業づくりを行ってきた。『9年間を見通した外国語活動・英語教育の授業づくり』の推進として,前後期課程の外国語活動,外国語担当教員の相互乗り入れによる授業,英会話スクール NS とのティームティーチングや国際交流や実践的な英語を学ぶ機会をつくることを目的とした外国人の積極的な受け入れを行ってきた。『地域人材の活用や教材開発』として,学校運営協議会制度を取り入れ,地域の人材や資源を活用した特色ある教育活動を行ってきた。研究指定後の平成30年度も引き続き,同じ研究テーマのもと,研究を進めてきた。
  しかし,年度末に行った教職員の研修のまとめの中で,児童生徒の課題を解決するために研究主題を見直すこととした。令和元年度より,研究主題を『自ら考えて判断し、表現し合える児童生徒の育成』と設定し,研究を進め5年目を迎える。

3 児童生徒の実態から

 本校は,義務教育学校として開校して8年目を迎える。生徒数は 145 名である。学習面においては,真面目に授業に取り組むことができる。
 しかし,支援を要する児童生徒が多く,人間関係づくりが苦手な面もみられる。また,心に不安を抱えている子どももおり,困難にぶつかったときに自分で考えて行動したり,克服したりすることに課題がみられる。
 学力面では,全国学力・学習状況調査の結果は,6年生は全国と比べると国語+6ポイント,算数+8.7 ポイント,理科+8.7 であった。9年生は,全国と比べて,国語+10 ポイント,数学+5.6 ポイント,理科+14.7 ポイントであった。
 また,12月に実施された,高知県学力定着状況調査(4年生から8年生まで実施)では,4年生は全国と比べて国語+3.9 ポイント,算数-1.8 ポイントであった。5年生は全国と比べて国語-8.3 ポイント,算数-0.4 ポイント,理科-8.5 ポイントであった。7年生は全国と比べて国語+11.5 ポイント,数学+17.3 ポイント,社会+7.1 ポイント,理科+19.2 ポイント,英語+26.6 ポイントであった。8年生は全国と比べて国語+2.1 ポイント,数学-1.8 ポイント,社会+11.3 ポイント,理科+14.7 ポイント,英語+8.9 ポイントであった。
 本校は 1 学級当たりの人数が 10~20 名と少ないため,年度によって差がみられるが,各種学力調査の結果を見ると,全体的にどの学年もどの教科も意欲的に取り組んでいるものの,領域や分野,教科によっては今後も基礎的な学力を繰り返し定着させていくことが必要である。

4 地域の実態から

 土佐山地域は,高知市街地から北へ車で約30分,鏡川の源流域の深い緑に囲まれた山間地に位置しており,四季折々に見られる美しい自然,菖蒲洞や山嶽社などの素晴らしい史跡が残されている。また,自由民権運動発祥の地である土佐山は,世代を超えて学び合うことで,地域社会に貢献できる人材を育てる独自の教育理念「社学一体」が息づいている。
 本校は,地域学校協働本部に加え,学校運営協議会制度を導入しており,地域住民が責任ある立場で学校運営に参画して熟議を重ねながら教育活動を支え,学校・地域・家庭が教育目標の達成に向かって協働的に取り組む体制が整っている。これらのことから,一人一人がこれからの時代をたくましく生き抜いていくためには,自らが学習の主体者となり,探究的に学び,他者と協働して,予測不能なことに対しても判断し,様々な問題をよりよく解決していける資質,能力を育んでいくことが必要であると考える。また,全教職員,家庭や地域の人々とともに児童生徒を育てていくという視点に立ち,家庭,地域社会との連携をさらに深め,学校内外を通じた児童生徒の生活の充実と活性化を図ることが何よりも重要であると考える。以上のようなことから,今年度も研究テーマを『自ら考えて判断し表現し合える児童生徒の育成』とし取り組んでいくこととした。

5 研究仮説

 土佐山学を核としたカリキュラムをもとに,全教職員が不断の見直しを図るなど,カリキュラム・マネジメントに責任をもって取り組むようになれば,本校の教育活動の質の向上が図られ,自ら考え判断し,表現し合える児童生徒を育てることができるであろう。